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急性期病棟の看護師長
ゲスト令和8年度診療報酬改定で新設された「情報通信機器等を用いた看護職員及び看護補助者の業務効率化」の施設基準について教えてください。
施設基準通知(保医発0305第7号 別添2の第2の19(1))には「アからウまでに掲げるICT、AI、IoTの機器等を全て導入しており、当該病棟の看護職員等が広く使用していること」と記載されていますが、「広く使用」とは具体的にどの程度の使用率を指すのでしょうか。
当院では、ア(見守りセンサー)、イ(音声入力による看護記録システム)、ウ(多職種チャットツール)の3種類を導入する方向で検討していますが、それぞれ性質も使用シーンも異なります。ア・イ・ウすべてに同じ使用率基準が適用されるのか、それとも機器の種類ごとに異なる基準があるのかが判然とせず、届出の判断に困っています。具体的な使用率の目安と、現場で押さえるべき確認ポイントを教えていただけますでしょうか。
♥ 0いいねをした人: いません結論:ICT機器の「広く使用」は、ア・イ・ウで異なる3つの使用率基準を満たすことを指します
令和8年度診療報酬改定で新設された「情報通信機器等を用いた看護職員及び看護補助者の業務効率化」の施設基準について、現場では「広く使用」の解釈に戸惑う声が多く寄せられています。施設基準通知(保医発0305第7号 別添2の第2の19(1))では「アからウまでに掲げるICT、AI、IoTの機器等を全て導入しており、当該病棟の看護職員等が広く使用していること」と規定されていますが、具体的な使用率の数値は通知本体には示されていませんでした。この曖昧さを解消し、届出判断と実績管理の指針を明確にすることが本記事の目的です。
結論として、令和8年4月1日付の疑義解釈資料(その2)問35により、ア・イ・ウそれぞれに別個の使用率基準が示されました。アの見守り機器は「1月当たりの平均で入院患者の概ね2割以上」、イの看護記録機器は「概ね全ての看護職員が週に1回程度」、ウの情報共有機器は「当該日に勤務する概ね全ての看護職員」が使用していることが求められます。3つの基準は分母(患者か職員か)も頻度(月平均・週1回・毎日)も異なるため、それぞれを区別して管理する運用設計が不可欠です。
ア:見守り機器は「月平均で入院患者の概ね2割以上」が使用基準
アの見守りにおける業務の効率化に資するICT機器等については、1月当たりの平均で当該病棟の入院患者の概ね2割以上が当該機器を使用していることが求められます。施設基準通知では「患者の状態や、患者又はその家族等の意向に応じ、一部の患者に当該機器を使用せず個別に見守りを行うこと又は当該機器の使用を一時的に停止することは差し支えない」とされており、全患者への一律導入は前提とされていません。あくまで適切に患者の状態を判断したうえで、月平均2割以上の使用実績を確保する運用が想定されています。
2割の分母は患者であり、職員ではない点に注意が必要です。例えば40床の病棟であれば、月平均で常時8名以上が見守り機器を使用している状態を維持しなくてはなりません。日々の使用患者数は機器ベンダーの稼働ログや看護記録上で確実に把握し、月次で集計できる体制を整えておく必要があります。
イ:看護記録機器は「概ね全看護職員が週に1回程度」が使用基準
イの看護記録の作成等の効率化に資するICT機器等については、概ね全ての看護職員が週に1回程度当該機器を使用していることが基準となります。アとは異なり、分母が患者ではなく看護職員である点に注意が必要です。音声入力システムや看護記録作成支援アプリなど、看護記録の効率化に資する機器が該当します。
週に1回程度という頻度自体は決して高い水準ではありません。しかし「概ね全ての看護職員」という条件があるため、夜勤専従者やパート職員も含めた運用設計が求められます。シフト管理表と機器のログイン履歴を月次で突合し、未使用の職員が出ていないかを継続的に確認する体制が望ましいでしょう。
ウ:情報共有機器は「当該日勤務の概ね全看護職員」が使用基準
ウの医療従事者間の情報共有の効率化に資するICT機器等については、当該日に勤務する概ね全ての看護職員が当該機器を使用していることが求められます。イが「週1回」の頻度基準であったのに対し、ウは事実上「毎日」の使用が前提となる点が大きな違いです。多職種間のチャットツールやナースコール連携システムなど、リアルタイムの情報共有を支える機器が該当します。
「当該日に勤務する」職員が対象であるため、勤務日ごとの使用実績の把握が必要となります。日勤・夜勤を問わず、その日の勤務者全員のログイン状況を機器側で確認できる仕組みが望ましいです。導入時には、機器側にログ取得機能や日次レポート出力機能が備わっているかを必ず確認してください。
3つの基準を一覧で整理
3つの基準は分母と頻度が異なります。実務での誤解を防ぐため、下記のとおり整理しておきましょう。
- ア(見守り):分母=入院患者数、基準=月平均で概ね2割以上
- イ(看護記録):分母=看護職員、基準=概ね全員が週に1回程度
- ウ(情報共有):分母=当該日の勤務看護職員、基準=概ね全員
現場で進めるべき具体的アクション
まずは、自院に導入予定のICT機器等がア・イ・ウのどの分類に該当するかを整理してください。届出時には、各機器の用途と分類を明確にしたうえで、それぞれの使用率基準を満たしているかを別個に検証する必要があります。導入機器とア・イ・ウの分類を一覧化したマッピング資料の作成をお勧めします。
次に、各機器の使用実績を客観的に把握する仕組みを整えてください。アについては患者ごとの使用台帳、イ・ウについては職員ごとの使用ログを、それぞれ月次で集計できる体制が必要です。ベンダーに使用状況レポートの出力機能があるかを確認し、機能が不足する場合は手作業での集計フローを設計しておきましょう。
最後に、運用ルールを病棟内で共有してください。特にイ・ウの基準は職員側の使用行動が達成の鍵となるため、看護師長を中心に、機器使用の必要性と頻度を周知することが重要です。基準未達のリスクを早期に発見できるよう、月次でのモニタリング体制を構築しておきましょう。
結論
ICT機器等の「広く使用」の要件は、ア・イ・ウそれぞれに別個の使用率基準として具体化されました。アは入院患者の概ね2割以上、イは概ね全看護職員の週1回程度、ウは当該日勤務の概ね全看護職員、というように対象も頻度も異なります。届出の準備と継続要件の維持には、各機器を分類ごとに切り分け、それぞれ別の指標で実績を管理する運用が不可欠です。まずは自院の導入機器を3分類にマッピングし、月次集計の仕組みづくりから着手しましょう。
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