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精神科の管理栄養士
ゲストいつも記事を拝見し、大変勉強にさせていただいております。
事務長より「特別食加算(嚥下調整食)の算定や、特別料金の徴収を実施できないか」と指示があり、導入の実現可能性を検証の上で報告することになりました。
しかし、現場(栄養課)として以下の点について疑問や課題があり、検討に苦慮しております。現場の実務や解釈についてアドバイスをいただけますと幸いです。
1. 言語聴覚士(ST)不在時の算定について
算定要件にある多職種連携(ミールラウンドやカンファレンス等)について、STの配置は必須でしょうか。当院にはSTが不在なのですが、STなしの体制でも要件を満たし算定することは可能でしょうか。2. 【定期的なカンファレンス】の開催目安
「定期的なカンファレンス(または試食会)の開催」とありますが、一般的な実務上の目安(週1回、月1回など)はどのように捉えるのが妥当でしょうか。3. 毎日の検食運用について
毎日1回実施する検食について、提供しているすべての嚥下調整食を「医師と管理栄養士(または栄養士)」の両名が毎日1回確認するということでしょうか。4. 栄養量確保・委託費コストとのバランスについて
当院では学会分類2021に沿った嚥下調整食を提供していますが、軟菜食エネルギーでの提供のため、常食と同等のエネルギーや栄養量を確保するために調整が必要です。また、給食委託会社へ見た目や盛付等の配慮・クオリティ向上を求めると委託管理費の上昇が見込まれます。事務長などの経営層へ報告するにあたり、コストや現場の負担感をふまえた実現可能性の捉え方や、アドバイス等があればぜひお聞かせください。よろしくお願いいたします。
♥ 0いいねをした人: いませんご質問ありがとうございます。令和8年度診療報酬改定で、嚥下調整食が特別食加算の対象に新たに加わりました。この新しい評価について、事務長から導入の検証を任され、施設基準の読み方と採算の両面で判断に迷われているのですね。本回答では、通知と疑義解釈の根拠に沿って4つのご質問に答え、事務長へそのまま報告できる判断材料を整理します。
結論として、ST不在を理由に直ちに算定不可とはなりませんが、貴院の場合は「栄養量の引き上げ」と「責任者の研修修了」が算定の前提になります。第一に、STの配置を必須とする明文の規定はありません。第二に、カンファレンス等の開催頻度に定めはなく、院内で頻度を決めて記録を残すことが重要です。第三に、検食は医師・管理栄養士・栄養士のいずれか1名が毎日1食行えば足ります。第四に、常食と同等の栄養量を確保できていない嚥下調整食は算定できないため、軟菜食エネルギーのままでは加算の対象になりません。
1. ST不在時の算定について
STの配置は、通知上も疑義解釈上も、必須要件として明記されていません。ただし、通知にSTが職種として例示されているため、不在時の取扱いは事前に確認しておくべき論点です。
通知も疑義解釈も、STを「例示」として挙げている
STの位置づけは、施設基準の通知(保医発0305第17号 別添2(5)③)で確認できます。この規定は、試食会やカンファレンスの参加者を「嚥下調整食に関わる管理栄養士、言語聴覚士、調理師等」と定めています。末尾の「等」は、列挙した職種が例示であることを示します。一方、ミールラウンドを定めた留意事項通知(保医発0305第16号 3(2)③)は「多職種による」とだけ定め、職種を指定していません。さらに、疑義解釈(その1)問46も、対象患者の評価を「医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士等の多職種」で行うとしており、STを例示の一つとして扱っています。
ST以外の職種で多職種体制を組む
ST不在の病院では、ST以外の職種で多職種体制を組むことが現実的な選択肢です。たとえば、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士、作業療法士などが候補になります。精神科病院であれば、病棟で日々の食事介助を担う看護師の参加が、摂取状況の評価に特に役立ちます。なお、疑義解釈(その1)問46により、対象患者の判定に内視鏡下嚥下機能評価(VE)や嚥下造影(VF)は必須ではないと示されています。VE・VFの設備がない病院でも、多職種の評価と医師の食事箋で対象患者を決められます。
真のハードルは責任者の研修修了
STの有無よりも重いハードルは、嚥下調整食に係る責任者の要件です。施設基準(別添2(5)④)は、責任者を「実習を伴う適切な研修を修了した当該保険医療機関の管理栄養士」と定めています。この研修は、疑義解釈(その2)で、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士に係る研修か、実習5時間以上を含む10時間以上の研修に限られると示されました。後者の具体例として、疑義解釈(その5)は、日本栄養士会主催の「特別食加算(嚥下調整食)に係る研修会」と、日本健康・栄養システム学会主催の研修を挙げています。また、令和7年度までに調理師等向けの嚥下調整食研修を修了した管理栄養士は、当面の間は責任者要件を満たすとされています(疑義解釈(その7)問25)。
まずは、ST不在時の取扱いについて、管轄の地方厚生(支)局へ事前に照会し、回答を記録しておきましょう。あわせて、責任者候補の管理栄養士が受講できる研修の日程を調べ、受講計画を立ててください。
2. 定期的なカンファレンスの開催目安
カンファレンスや試食会の開催頻度は、通知にも疑義解釈にも具体的な定めがありません。そのため、院内で頻度を明文化し、実施記録を確実に残すことが実務上のポイントになります。
「定期的」が求められる会議は2種類ある
「定期的」の要件は、性質の異なる2つの会議に課されています。1つ目は、施設基準(別添2(5)③)の試食会・カンファレンスです。この会議は、物性・盛り付け・味・香り・温度・栄養量を総合的に評価し、嚥下調整食そのものの質を維持する場です。2つ目は、留意事項通知(3(2)③)のミールラウンドです。この会議は、対象患者ごとに必要性や摂取量を確認し、食事内容が患者に合っているかを判断する場です。
実務上の目安は会議の目的から決める
開催頻度の目安は、それぞれの会議の目的から逆算して決めるのが妥当です。以下は通知の基準ではなく、事務長としての私見です。試食会・カンファレンスは、献立や物性の見直しが目的なので、月1回程度を下限の目安とします。ミールラウンドは、患者の状態変化を捉えることが目的なので、週1回程度を基本とし、病棟数や対象患者数に応じて調整します。ミールラウンドで常食が適していると判断した場合は、速やかに食事を変更する必要がある点にも注意してください。
まずは、2つの会議の頻度・参加職種・記録様式を院内規程に定めましょう。議事録やミールラウンドの記録は、適時調査で体制を説明する際の根拠になります。
3. 毎日の検食の運用について
検食は、医師と管理栄養士の両名で行う必要はありません。また、提供しているすべての嚥下調整食を毎日確認することまでは、通知上求められていません。
「又は」は、いずれか1名で足りるという意味
検食の実施者は、施設基準(別添2(5)②)で「医師、管理栄養士又は栄養士による検食が毎日1食は行われ」と定められています。「又は」とあるため、3職種のいずれか1名が実施すれば要件を満たします。検食では、食形態・見た目・味が適しているかを確認し、その所見を検食簿に記入します。
既存の検食に組み込み、コードをローテーションする
検食の負担は、既存の運用に組み込むことで抑えられます。入院時食事療養(Ⅰ)の届出医療機関では、すでに毎食の検食が行われているはずです(留意事項通知2(1)①)。この毎食の検食のうち1食に嚥下調整食を加え、検食簿に嚥下調整食の所見欄を設ける方法が効率的です。確認するコードは、日ごとにローテーションし、一定期間ですべてのコードを網羅すると、質の管理として説明しやすくなります。
検食とは別に「提供前の目視確認」が必要
検食と混同しやすい要件として、提供前の目視確認があります。留意事項通知(3(2)②)は、提供前に目視等で多量の離水や食形態の変化がないかを確認するよう求めています。この確認は、1日1食の検食とは別に、提供のたびに行うものです。委託先の盛り付け工程に、確認手順として組み込んでおきましょう。
まずは、検食簿の様式に嚥下調整食の所見欄を追加しましょう。あわせて、コードのローテーション表と、提供前確認のチェック手順を作成してください。
4. 栄養量確保・委託費とのバランスについて
常食と同等の栄養量の確保は、配慮事項ではなく算定の前提条件です。そのため、経営層への報告では、まず栄養量を引き上げる方法とコストを示し、そのうえで加算収入と比較する順序で整理してください。
常食と同等の栄養量がなければ算定できない
栄養量の要件は、疑義解釈(その1)問48で明確に示されています。この問は、患者に必要な栄養量が1食の献立として常食と同等に確保できていない嚥下調整食は算定できないと答えています。貴院の嚥下調整食は軟菜食エネルギーで提供しているため、現状のままでは加算の対象になりません。施設基準の一覧(別添2(5)①)にも、コードごとの目安栄養量を示す必要があります。まずは、常食との栄養量の差を、コードごとに数値で把握しましょう。
収入は「1食76円×算定できる食数」で見積もる
加算収入は、1食76円(1日3食まで)に算定対象の食数を掛けて見積もります。たとえば、対象患者が20名で毎日3食を算定できれば、20名×3食×30日×76円で、月約13.7万円になります。ただし、算定対象の食数は、現在の嚥下調整食の提供数をそのまま使うと過大になります。通知(留意事項3(2)①)は、単にピューレ・ペースト状にしたもの、常食を刻んだだけのもの、刻みにとろみをかけただけのもの、主食のみを嚥下調整食とした場合を対象外としているからです。要件を満たす食数だけを数えましょう。
コストは4項目に分けて整理する
体制コストは、次の4項目に分けると経営層が比較しやすくなります。
- 栄養量の引き上げ費:常食と同等の栄養量にするための献立改定と食材費の増額分
- 委託費:盛り付け・温度・離水確認など、品質向上に伴う委託管理費の増額分
- 研修費:責任者の研修受講料、受講中の勤務調整
- 人件費:ミールラウンド、試食会・カンファレンス、検食に要する各職種の時間
コストは「市販品」「計器不要」「仕様書」で抑える
栄養量の確保と委託費の抑制には、3つの工夫が有効です。1つ目は、市販品の活用です。通知(留意事項3(2)①ただし書き)は、安全な食形態で常食と同等の要件を満たしていれば、市販品の使用を認めています。高エネルギー・高たんぱくの市販品を組み合わせれば、栄養量を効率よく引き上げられます。2つ目は、測定機器への投資が不要な点です。疑義解釈(その1)により、テクスチャーを計器で測定する必要まではなく、責任者が品質管理を行えばよいとされています。3つ目は、委託仕様書への品質要件の明記です。盛り付け、温度、離水確認などの求める水準を具体的に書けば、見積もりの根拠が明確になり、委託会社との交渉もしやすくなります。なお、第三者に委託しても、食事療養の最終的責任は医療機関にあります(別添2(2))。
特別料金は嚥下調整食とは切り分けて検討する
特別料金の徴収は、嚥下調整食の加算とは切り離して検討すべきです。嚥下調整食は、医師の食事箋に基づいて提供する療養上必要な食事です。これに対し、特別メニューの食事は、患者の自由な選択と同意に基づき提供するものです(留意事項6(1))。そのため、療養上必要な嚥下調整食そのものに追加料金を上乗せする設計は、制度の趣旨になじまないと私は考えます。特別料金の候補としては、今回の改定で明確化された行事食やハラール食などの宗教配慮食、基本メニュー以外を選べる選択メニューが適しています。選択メニューの料金は、従来の1食17円の標準額が削除され、医療機関が社会的に妥当な額を設定できるようになりました。ただし、患者への事前説明と同意、療養上支障がないことについての主治医の確認、病棟内での掲示、原則としてウェブサイトへの掲載が必要です(留意事項6・7)。
数字に表れない効果も報告に添える
採算表に加えて、数字に表れにくい効果も報告に添えると、経営層の判断材料が厚くなります。適切な嚥下調整食の提供は、誤嚥性肺炎の予防、栄養状態の改善、経口摂取の維持につながると期待されています。精神科病院は入院が長期化しやすく、患者の高齢化に伴って嚥下機能の低下も増えています。誤嚥性肺炎による転院や治療の負担を減らせれば、病院全体の運営にも好影響があります。
まずは、コードごとの常食との栄養量の差と、要件を満たせる見込みの食数を数えましょう。そのうえで、4項目のコストと加算収入を並べた試算表を作ってください。届出にあたっては、届出書の添付書類に嚥下調整食に係る責任者の氏名欄があり、届出前1か月間の実績も必要です。研修修了から届出までのスケジュールも、報告書に含めておくと事務長が判断しやすくなります。
まとめ
嚥下調整食の特別食加算は、ST不在でも直ちに算定不可とはなりませんが、貴院では栄養量の引き上げと責任者の研修修了が前提になります。第一に、STの配置は必須と明記されておらず、ST以外の職種で多職種体制を組めます。ただし、不在時の取扱いは地方厚生(支)局で確認しておきましょう。第二に、カンファレンス等の頻度は院内で定め、記録を残すことが重要です。第三に、検食はいずれか1名が毎日1食行えば足り、既存の検食に組み込めます。第四に、常食と同等の栄養量がなければ算定できないため、軟菜食エネルギーからの引き上げが最初の課題です。この順序で整理すれば、事務長へ「導入できるか、何が足りないか、いくらかかるか」を明確に報告できるはずです。
改定内容の全体像は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【令和8年度診療報酬改定】入院時の食事療養に係る見直し|嚥下調整食の新評価と特別料金の柔軟化♥ 0いいねをした人: いません -
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