ご質問ありがとうございます。移行期の請求は患者さんの負担額に直結する大切な論点ですので、順を追って整理します。令和8年6月1日から、陽子線治療・重粒子線治療の一部が先進医療から保険診療へ移行します。この移行をまたぐ患者さんの請求方法を誤ると、患者さんの自己負担額が変わってしまいます。本回答では、移行期における請求の取り扱いを、患者さんの状態別に整理します。
結論は、「治療を開始した時点」で取り扱いが決まる、という点に尽きます。第一に、令和8年5月31日以前に先進医療として開始した治療は、6月1日以降も先進医療として請求します。第二に、6月以降の分だけを保険診療へ切り替えて請求することはできません。第三に、同意は取得済みでも一連の治療をまだ開始していない患者さんは、改めて保険診療の同意を取得すれば、保険診療として開始できます。
1. 5月31日以前に治療を開始した患者さんは、最後まで先進医療として請求します
5月31日以前に先進医療として治療を開始した患者さんは、6月1日以降の治療も先進医療の枠組みで実施し、先進医療として費用を請求してください。つまり、ご質問の「6月以降の分は保険でレセプト請求してよいか」という点については、不可です。途中から保険診療へ切り替えることはできません。一連の治療は、開始時の枠組みのまま完結させる取り扱いになります。
この取り扱いの根拠は、疑義解釈資料(その2)の問145にあります。同問では「令和8年5月31日以前に先進医療による治療を開始した患者については、同年6月1日以降の治療についても先進医療の枠組みにおいて実施し、費用の請求を行うこと」と明記されています。5月に照射を開始した患者さんは、6月以降の照射分を含めて、引き続き先進医療として請求する、という整理です。
2. 同意のみで未開始の患者さんは、保険診療へ切り替えられます
5月31日時点で先進医療の同意を取得済みでも、一連の治療をまだ開始していない患者さんは、保険診療として6月から開始できます。先ほどの「開始済みの患者さんは切り替え不可」とは対照的に、こちらは切り替えが認められます。両者を分けるのは、同意の有無ではなく、治療をすでに開始しているかどうかです。
この場合の手順も、同じく問145に示されています。同問では「先進医療による治療に係る同意を取得しているが、一連の治療を開始していない患者が、同年6月1日以降に保険診療による治療を開始することを希望する場合には、改めて保険診療による治療に係る同意を取得することで、保険診療に切り替えて治療を開始して差し支えない」とされています。注意点は、先進医療の同意書がそのまま使えるわけではない、という点です。保険診療として、改めて同意を取得し直す必要があります。
3. 現場で進めていただきたいこと
移行期の請求を正しく処理するために、まずは対象患者さんの「治療開始日」を一覧で確認しましょう。5月31日以前に照射を開始しているか、それとも同意のみで未開始かで、取り扱いが二つに分かれます。この一覧があれば、どの患者さんを先進医療のまま請求し、どの患者さんを保険診療に切り替えられるかが一目で判断できます。
次に、放射線治療部門と連携し、同意取得の状況を突き合わせてください。未開始かつ患者さんが保険診療を希望する場合は、保険診療としての同意書の取り直しが必要になります。同意書の様式と説明の段取りを、6月までに準備しておくと安心です。
最後に、患者さんへの費用説明の準備を進めてください。先進医療のまま継続する患者さんと、保険診療へ切り替わる患者さんとでは、自己負担額が大きく異なります。トラブルを避けるため、それぞれの患者さんに対し、どの枠組みで請求するか、自己負担がどう変わるかを、文書で丁寧にご案内されることをお勧めします。
以上をまとめます。5月31日以前に開始した治療は、6月以降も先進医療として最後まで請求します。6月分のみの保険切り替えはできません。一方、同意済みでも未開始の患者さんは、保険診療の同意を取り直せば保険診療として開始できます。判断の分かれ目は「治療を開始しているかどうか」です。まずは対象患者さんの治療開始日の確認から始めてください。