回復期で日々栄養管理に向き合っておられる中での、とても実務的なご質問ですね。令和8年度改定で新設された特別食加算(嚥下調整食)は、対象患者の幅が広い一方で、算定の線引きが分かりにくく、返戻を心配する声が各地で上がっています。今回は、ご質問の2パターンについて、算定できる場合とできない場合の境界線をはっきりさせます。
結論から申し上げると、算定可否は「経口で提供する嚥下調整食だけで、常食と同等の必要栄養量が確保できているか」で決まります。この基準に照らすと、経管栄養を併用していても、嚥下調整食単独で必要栄養量を満たせていない場合は算定できません。同じく、嚥下訓練用のゼリー等を提供しているだけの場合も算定できません。そして、算定の前提として、対象患者は多職種で評価したうえで医師が嚥下調整食を必要と判断し、食事箋を発行した患者であることが必要です。
1.算定可否の判断基準は「必要栄養量が常食と同等に確保できているか」です。
この判断基準は、疑義解釈資料(その1)の問48に明記されています。問48では「嚥下訓練のためにゼリー等の嚥下訓練食品を提供した場合や、嚥下調整食と経管栄養を併用している場合も、特別食加算は算定できるか」という問いに対し、「患者に必要な栄養量が、1食の献立として常食で提供される場合と同等に確保できていない嚥下調整食は算定できない」と回答されています。
この回答を、ご質問の1人目(経管栄養併用)に当てはめてみましょう。経口の嚥下調整食だけでは必要栄養量に届かず、不足分を経管栄養で補っているのであれば、その嚥下調整食は「常食と同等の栄養量を確保できていない」状態です。したがって、この患者さんは算定できません。逆に、嚥下調整食だけで必要栄養量を満たしており、経管栄養はあくまで補助的という位置づけであれば、算定の余地が出てきます。
同じ基準を、2人目(嚥下訓練食品)にも当てはめます。ST の嚥下訓練で提供するゼリー等は、訓練を目的とした少量の食品であり、1食の献立として必要栄養量を確保するものではありません。したがって、この患者さんも算定できません。ご相談者様の「経口の嚥下調整食だけで必要栄養量が確保できているかで決まる」という解釈は、まさにこの問48の趣旨どおりで、正しいご理解です。
2.算定の前提として、対象患者の要件と品質管理の要件があります。
対象患者の要件は、疑義解釈資料(その1)の問46で示されています。問46では、対象となる「摂食機能又は嚥下機能が低下した患者」について、「内視鏡下嚥下機能評価や嚥下造影は必須ではないが、医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士等の多職種で評価を行う等により、適切な栄養量及び内容を有する嚥下調整食が必要であると医師が判断し、食事箋を発行した患者が対象である」と回答されています。VE や VF がなくても、多職種評価と医師の判断・食事箋発行が揃っていれば対象になる、という点が実務上のポイントです。
品質管理の要件は、疑義解釈資料(その1)の問47で示されています。問47では、硬さや付着性等のテクスチャーを計器で測定する必要はないとしたうえで、「嚥下調整食に係る責任者が品質管理を行うこと」と回答されています。計器測定は不要ですが、責任者による品質管理という運用は必須ですので、こちらも体制を整えておきましょう。
3.現場では、次の3点を確認・準備してください。
まず、対象患者ごとに栄養必要量と経口摂取量を確認しましょう。経口の嚥下調整食だけで必要栄養量を満たしているか、不足分を経管栄養で補っていないかを、栄養管理計画や食事箋上で明確にしておくと、算定根拠が残ります。
次に、医師の判断と食事箋発行の流れを確認しましょう。多職種評価を経て、医師が嚥下調整食を必要と判断し、食事箋を発行している記録が揃っているかを点検してください。
最後に、嚥下訓練食品のみの患者を算定対象から外す運用を、ST・医事課と共有しておきましょう。訓練食品の提供と、1食の献立としての嚥下調整食提供は別物である、という線引きを病棟全体で揃えておくと、返戻リスクを大きく減らせます。
まとめます。特別食加算(嚥下調整食)の算定可否は、経口の嚥下調整食だけで常食と同等の必要栄養量が確保できているかで決まります。経管栄養併用でも嚥下調整食単独で必要栄養量を満たせない場合は算定できず、嚥下訓練食品のみの提供も算定できません。算定の前提として、多職種評価に基づく医師の判断・食事箋発行と、責任者による品質管理を整えておきましょう。ご相談者様の解釈は正しいので、自信を持って運用を組み立てていただいて大丈夫です。